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アンチ対策になるか?意地悪や復讐はどこから来る?【悪意の科学】

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A:自分と相手・世間に喜ばれることをしよう(三方良し)→わかる(^^)
B:自分が不利益を被ってでも、相手に損をさせたい→は?(゜.゜)
・・というBパターンのようなめずらしいテーマを扱った書籍を読んでみました。

自分とみんなが喜ぶことをする(win-win)について書かれた書籍はたくさんありますが、自分が不利益を被ってでも、相手に損をさせる(悪意)について書かれた書籍は少ないので、中々面白いテーマじゃないかと思います。

読んでみると、「自分もやったことあるわ‥」という内容も多かった(^^;)
悪意の正体を理解すると、
・怒りに任せた行動からくる後悔を減らせる
・他者からの悪意をできるだけ回避できる(アンチ回避)
・・のような方法がわかるかもしれません。

この記事で紹介すること

・そもそも書籍で紹介されている悪意とは何か?(かんたんに紹介)
・あるある悪意の事例
・才能と運、どっちが妬まれやすい?
・「正しい」より「自由」でいたい心理
・悪意にも2つのパターンがある?
・協力、利己、利他、悪意で、もっとも生き残るタイプはどれ?
・悪意をできるだけ回避する方法

この記事は書籍のネタバレを含みます。
あと、書籍は翻訳のせいで(?)読みにくく、誤字らしきものもポツポツあったので、理解できた部分だけできるだけ分かりやすく書いていきます(^^;)

目次

そもそも悪意とは何か?(かんたんに紹介)

悪意のある行動とは、他者を傷付け害を与え、かつその過程で自分にも害が及ぶ行動と定義している。
(中略)
より広義の定義には、他者に害を与えるが、自分は傷付くリスクがあるだけの場合も含まれる。

悪意の科学より引用

広い意味では「報復される可能性がないとき」や「自分が損を被る可能性が少ない」安全圏から他者に攻撃する行為も含まれますが、この書籍が主に取り上げているのは「自分と相手に害を与える」方の悪意です。

パッと思いつくのはマンガやドラマでよくある「復讐系」の話とかかな?

おそらく、どんな聖人でも「悪意」のある行動をした人は多いんじゃないでしょうか?

・チームの嫌いなヤツを罰するために、連帯責任が生じる場面で、わざとミスをする
・車を運転しているときに、わざとモタモタ走り後ろの車をイラ立たせる
・交際相手に仕返しするためだけに、相手の大事なものを破壊する

「仕返し」「公平じゃないことへの罰」「共依存」など色んなパターンが考えられますね。
※共依存は、たとえばパートナーなど自分が依存している相手が自分の知らない所で幸せになるのが許せないと考える。
共依存していない人々は、自分の知らない所で相手が幸せになるのは嬉しいと考える。

共依存について触れられていた書籍↓

人間は4つの顔を持つらしい

①協力的な行動:自分と相手に利益をもたらす行為
②利己的な行動:他者ではなく、自分だけが利益を得る行為
③利他的な行動:自分がコストを負担して、他者に利益を与える行為
④悪意のある行動:自分と相手の双方に害を及ぼす行為

悪意は非常に恐ろしいものになりうる。
自己の利益に束縛されない敵ほど恐ろしい相手がいるだろうか?
自分勝手な人間も厄介ではあるが、少なくとも相手の利己心に訴えて説得することはできる。
では、自分の幸福を犠牲にしてでも、あなたを傷つけようとするほどの悪意を持つ人には、どんな言葉をかけたらいいだろう?
(中略)

こうした人々は交渉にも応じず、説得不能で、あなたを殺すまではいかないとしても、少なくとも何かしら迷惑をかけるまで決してやめることはできない

悪意の科学より

A:ネット(匿名)で誹謗中傷する人々
B:むしゃくしゃして、無差別に暴力を振るう人々
C:許せないヤツへ復讐する人

いわゆる話の通じない相手にどう対処するか?

完全防御できる対策はありませんが、できるだけ避けるという対策の1つとして、「公平性を保つ」という話が紹介されていました(後述)。

余談:この4つの顔には見覚えがある

以前、読んだGIVE&TAKEという書籍で紹介されているギバー・テイカー・マッチャーの話と似ています。
ギバー:相手の利益を考える(利他的・協力的)
テイカー:自分の利益だけを考える(利己的)
マッチャー:何かを与えられたらお返しする(悪意・損得を考える公平な人々)
GIVE&TAKEの書籍によると、マッチャーの人口が1番多いそうです。
つまり、世の中には公平な人々=悪意を持っている人々が多いということになる。

マッチャーについて多少理解していると、この書籍「悪意の科学」の理解が深まるかもしれません。

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平等じゃないことへの罰?【悪意の実験:最後通牒ゲーム】

この書籍の主役である最後通牒(さいごつうちょう)ゲームというものが紹介されていました。

・被験者は複数いるが、2人ペアになってプレイする
・2人(人物Aと人物B)はルールの説明を事前に受けている
・Aに10ドル与えて、Bと分け合うように言われる
・AはBに与える金額を自由に決めることができる
・Aが提示する金額をBが受け入れるなら、AとBは提示された金額をそれぞれ受け取る
Bが提案を拒否した場合、Aに与えられた10ドルは没収
2人とも何ももらえない=2人とも損をする
・ゲームをプレイするのは1回だけ

‥というルールです。

1つの例として、AはBに10ドル中2ドルを提示したとする(Aは8ドルもらうことになる)。
Bの思考と行動パターンはどうなるか?
①:0ドルでもかまわないのに2ドルもくれるなんて親切だ、受け取ろう
②:不公平だが、何ももらえないよりはマシだから2ドルもらっておこう
③ー1:不公平だ、拒否して相手にも思い知らせてやろう
③ー2:私(B)が損をするのは2ドルだし、相手(A)も8ドル受け取れなくしてやろ→相手の損をする額が重要

※10ドル→日本円に換算すると約1300円くらい

経済学者と数学者に、Bはどのような行動をするか予測してもらったそうです。
経済学者と数学者の予測は「Aの提示金額が0ドルでない限り、Bはどんな提示も受け入れる」と予測した。

合理的に考えると、タダでお金が手に入るなら、それを拒否することはないよね

もらえないよりはもらえた方がマシと考えますよね

しかし、提示する金額が低いと拒否する人たちが約50%もいたそうです。

自分は少ししかお金をもらえないのに相手はたくさんもらえるという状況よりも、誰もなにももらえないという状況のほうが好ましいと考えたのだ。

悪意の科学より

この最後通牒ゲームの実験で、おもしろかったのは提示する側(A)が「なぜ、拒否するのか?(怒)」と分かっていなかったこと

強欲なのか、合理的思考の持ち主なのか‥

匿名だったり、何度もゲームをやり直せるならともかく、普通はなるべく平等に扱わないと「相手からの報復が怖い」と考えますよね

ちなみに、最後通牒ゲームの金額を10ドル→100ドル(日本円換算で約13000円)にしても似たような結果になったそうです。
・100ドル中、10ドルの提案→拒否率75%
・100ドル中、30ドルの提案→拒否率約50%
・・これは平等じゃないことへの罰(悪意)→不平等を正す→他者を平等思考へと誘導していると著者は言っています。
さきほどの経済学者や数学者などを含む第3者から見ると「もったいねぇ!/(^o^)\」と思いますが、実際に自身がプレイヤーの立場だったら自分も拒否するかもしれません(^^;)

「世の中には金より大切なものがある」でなければ、皆が最後通牒ゲームで0ドル以外のオファーを受け入れるはず‥と書かれていて、短期的な利益を見ると、その通りだなぁと思いました。
しかし、怒り任せで判断しているならともかく、長期的にみて「人々を平等思考にする=自分が得する(?)」効果もあるので、やっぱりお金に結びついているような気もしますがね‥。

あとの方で詳しく書いていますが、悪意には「支配的悪意」と「反支配的悪意」があって、相手との競争を優位にする効果もからんでいると著者は述べています(後述)。

余談:不平等に不満を持つのは民主主義的な国民たち?

書籍では、色んな地域の民族に最後通牒ゲーム(10ドル中2ドル以下のオファー)をしてもらう実験をしていました。
・ペルーのマチゲンガ族→低額オファーの拒否率10%
・南アメリカのアチェ族→低額オファーの拒否率0%
・タンザニアのハッザ族→低額オファーの拒否率80%

支配者がいる村、みなが平等の村、不平等が当たり前の村、累進課税的な制度(公平な制度)がある村など色んな要素が絡んでいそうですね(^^;)
実際に、「一部の人は他の人よりも優れている」という考えを受け入れさせれば、社会的な対立を最低限に抑えられるという理論もあるそうです。

良いか悪いかは別として、「みんな平等なのが当たり前!」という考えが根底にある状態で不平等なできごとが起きると腹が立つよね‥

あと、悪意を抑えるのは自制心だと著者は言っています。
・酒に酔った人の方が低額オファーをよく断る
・自制心を疲れさせた後に最後通牒ゲームした人の方が低額オファーをよく断る

これは、なんとなく想像できるね‥
機嫌がいい時は怒らないことでも、イライラしているとキレちゃうことあるしね

平等じゃないことへの罰→不平等を正すこと?

前述している最後通牒ゲームでは‥
③ー1:不公平だ、拒否して相手にも思い知らせてやろう
③ー2:私(B)が損をするのは2ドルだし、相手(A)も8ドル受け取れなくしてやろう

‥と考える人々が約50%いると著者は言っています。

では、今まで不平等な提案をして結果的に損をした人々はどう考えるか?

今度からは平等に分けようと考えるかな‥

すこし前に上級国民と言われる人が車の暴走事故をおこし2名を死なせ、特別扱いされたことで大炎上しました。
これも平等じゃない事への怒り(罰を与えること)に入るのかもしれませんね。
じっさいに事故後、上級国民の家や家族への嫌がらせをした人々がいるというニュースもありました。

そんな事をしても自分は得をしないし、下手したら犯罪者として逮捕されますよね

ほかにも、
・相手を傷付けることだけを考える悪意
・競争で優位に立つための悪意
・・など色々な悪意のパターンが書籍で紹介されていますが、「平等じゃないことへ怒り」を自身に向けさせないためには平等なふるまいが役立ちます。

「公平」と「平等」の違いとは?

余談ですが、「公平と平等の違いって何だろう?」と思い調べてみました。
私もなんとなく使っていましたが、意味合いが少し違うようです(^^;)

公平は異なる能力を持つ者を別々に扱いますが、平等は異なる能力を持つ者を全て同等に扱います。

千秋楽サイトより引用

https://senshuraku.com/fairness-and-equality/#toc5

以下のイラストも平等(左)と公平(右)の違いが分かりやすいです↓

Interaction Institute for Social...
Illustrating Equality VS Equity - Interaction Institute for Social Change ATTENTION FRIENDS! Can you use the equality vs equity illustration in your book/video/presentation/etc? Yes! You do not need written permission to reproduce the...

公平のいい例としては、「累進課税(るいしんかぜい)」ですね。
たくさん稼ぐ人は税金が高くなり、稼ぎが少ない人は税金が安くなる→手取りの差を抑える→公平。

平等は性別・年齢・能力などを考慮せずに一律に扱う。
新型コロナウィルスが蔓延してしばらく経ってから、金持ちや貧乏関係なく、日本国民に一律10万円が支給されましたが、これも平等に当たりますね。

書籍では、公平と平等の意味がごっちゃなので引用した部分以外は できるだけ手直しさせていただきます(^^;)

悪意を完全回避するのは可能なのか?

ムシャクシャして目の前にいる人を無差別に殴るような悪意もあるので、悪意の完全回避は不可能です。
ただし、悪意を向けられる確率を減らす行動は可能とされています。
①情報統制する
②相手の癪に障るようなことをなるべくしない&言わない

①情報統制について、一度与えられたものを取り上げられると、人はものすごく抵抗します。
例‥
・一度上げた給料を下げようとすると、従業員はストライキを起こしたり、退職する
・貧富の差がある(見やすい)国は治安が悪い→貧民から富豪への悪意に発展

貧富の差が見える→悪意に発展というなら、「富の再分配は悪意をかわすためにある」と考えると、良くできたシステムだと思えますね

あと、情報統制を悪意回避のため(?)に使っているC国やR国が典型的で、たとえば一度情報や報道の自由を許してしまい、再度、情報規制されたら各地で暴動が起きるでしょう。
ほか、日本では今でこそ女性の権利が叫ばれていますが、再度、男尊女卑社会にしようとする動きがあったらどうなるでしょうか?

おそらく大暴動が起きるね‥

ただ、個人的にはC国やR国の情報規制は(経済成長が遅れたり)現実的ではないので、いずれ崩壊するんじゃないかと思いますが。

②相手の癪に障るようなことをなるべくしない&言わないについて‥
書籍では、選挙で自分が嫌いな有力候補者を当選させないために対立している候補者に票を入れる話が紹介されていました。
さらに、当選者が推進する政策や同じ党員にも影響が及ぶ。

人に嫌われるようなことをすると、悪意を向けられやすい・・という当たり前のことが書かれています。

政治って自分の好き嫌いで判断していいの‥?

まえに読んだ書籍に、自分がしらない分野や詳しくない分野では「自分の好き嫌いで物事を判断する」と言われていました。

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たとえば、あなたがクジラや生態系の知識がない状態で「クジラを助けるためにお金を寄付しますか?」という質問には、自分がクジラを好きか嫌いかで判断する。
本来は、生態系やらクジラが増えることへの影響、どのくらい必要なのかなど難しいことを調べたり、考えてから判断しなくてはならない。

似た理屈で、ちょっと前に記事になっていた「共感格差」という記事も参考になります。

データをいろいろ見てみる
共感格差 - データをいろいろ見てみる 21世紀の格差は、他者からの共感の格差をめぐるものになるだろう。 この記事で言いたいこと (社会的)共感は政治的・社会的リソースである。 物理的資産がリソースである...

こちらは助けるべき存在という「イメージ」から判断してしまう。
例‥
・若い女性→か弱いから助けるべき存在
・中年男性→男だし、大人なんだから守ってもらう必要はない
両者が同じ貧困者でも若い女性の方が共感されやすく、助けてもらわれやすい・・と書かれています。

保護犬の話では‥
・小さい子犬→かわいい、自分が守ってあげなくては!
・大きくて黒い成犬→自分が助けなくてもいいかな‥
同じく保護を必要としている犬なのに、判断がイメージに左右されていますね。

つまり、人の助けを必要としている方々はいい子ちゃん(友好的)でいた方がいいという事だね

最低限、敵をつくらない必要がありますね

すこし前に、公金を不正利用している団体Cが大問題になっていました。
団体Cの代表は周囲に攻撃的なタイプだったので、かばってくれる人が徐々に離れていましたね。

多様性の科学という書籍でも「友好的な人々」が得したり、爆速で成長する話が紹介されています↓

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最下位を嫌う人々の悪意

たとえば、所得(富)の再分配。
※所得の再分配とは、富の差を埋める制度
所得の多い人から多く税金を徴収して、所得の少ない人は税金が安い→所得の差を縮める

2008年の不況の際、人々は政府による所得の再分配をさほど重視していなかった。
これは減税により、自分たちよりも低い社会階層の人々との差が縮まる場合、例え生活が多少楽になるとしても減税を望まない人々が一定数いたためだと考えられる。
人間の「最下位を避けようとする」性質が現れたのだ。

最下位になりたくない気持ちと同じように、最上位の人々に対する嫌悪感も人間を悪意のある行動に駆り立てる。

悪意の科学より

書籍では、こんな話が紹介されていました。
①富裕層の税率を50%引き上げ、貧困層1人あたり500ドル支給する(富裕層の負担大・貧困層の援助小)
②富裕層に税率を10%だけ引き上げる→富裕層がもっと稼ぐ?→税収が増える?→貧困層1人あたりに1000ドル支給する(富裕層の負担小・貧困層の援助大)
・・この二者択一をイギリス・インド・アメリカの人々にしてもらう。

結果は、約85%の人が双方が得をする②の選択肢を選んだが、約15%の人が①の双方が損をする選択肢を選んだ。

書籍には書かれていないですが、おそらく、双方が損をする①の選択をした人の多くは中間層じゃないかと思います

しかし、②もわりと不確定要素があるよね?
税率を下げると富裕層がもっと稼ぐようになるとか‥本当にそうなるの?

税率を下げたら富裕層がもっと稼ぐようになる?→税収が増える?‥というのは不確かですが、もし、確実にそうなるなら、中間層の「上位を引きずり下ろしたい(支配されたくない)」「最下位になりたくない」という思いが絡んでいるのかもしれませんね。

ただ、不確定要素の多い②より①の方が「富の再分配」として確実だと考えた可能性もありますので、なんとも言えないところ。

悪意には2つのパターンがある「優位性」と「公平性」

支配的悪意:他者を支配したい、他者より優位に立ちたい
反支配的悪意:他者に支配されたくない、不公平は許さない

人間は相反する性質を兼ね備えており、自分はより多くを得ようとする一方で、他者がより多くを得ることには反対し、自分は他者を支配しようとする一方で、他者が支配することには反対する

悪意の科学より

この2つの悪意のどちらが優勢になるかは、その人の育ってきた環境や考え方、上に立つ者の態度などによって変わるそうです。

まぁ、当然といえば当然だね

ちなみに、2つの悪意の発見は最後通牒ゲームで悪意のある選択をした人々に「独裁者ゲーム」をしてもらって証明されたそうです。

独裁者ゲームで2つの悪意の選別ができる

独裁者ゲームとは、最後通牒ゲームのルールを一部変更したもの。
最後通牒ゲームで悪意のある行動をした人々に独裁者ゲームをしてもらう。

①プレイヤーは2人(AとB)
②Aが10ドルをもらい、Bと分け合ってもらう
③金額はAが自由に決めれる
④BはAから提示された金額を必ず受け入れなければならない

④の部分が最後通牒ゲームとの違いです。
最後通牒ゲームではBは提示された金額を断ることができたが、独裁者ゲームでは不可(Aが優位。
つまり、A(提案者)はB(分け前をもらう人)から悪意のある行動を受ける可能性がない。
Aは自分の道徳的規準からのみ判断する→お金を「公平に分ける人」と「公平に分けない人」がいるという発見。

この中で‥
公平に分ける人:反支配的悪意の持ち主
公平に分けない人:支配的悪意の持ち主
・・という選別ができる。

公平に分ける人

自分では「悪意のある」人間だとは思っていません‥ただ公平で、相手にも公平であることを求めているだけです。
(中略)
コミュニティの公平性の基準に違反した人を罰するためなら代償を払う覚悟がある
(中略)
彼らが罰した人々は以前より公平に行動するようになるだろう。

悪意の科学より

色んな所で上記のような人々が同じことをすれば、社会はより協力的になると著者は言っています。
低額オファーを拒否するのは反社会的な行動ではなく、むしろ社会性のある行動と言える。

冷静にここまで考えている人は少ないだろうけどね(大体は怒り任せだし)

不平等な扱いをされたときに感じる怒りの「言語化」とも取れて勉強になりますね

これが反支配的悪意が「返報性の原理」を作ったとも取れますね。
※返報性の原理は、他者から何か施しをもらうと、お返しせずにはいられない心理。ただし、悪い行いにも返報性の原理は働くので注意が必要(報復や復讐など)
好意には好意で、親切には親切で、意地悪には意地悪で応える。

余談ですが、おもしろいことが書かれていました。

より利他的な人がコストのかかる罰をより多く行うことはないが、他の人のためによくドアを開けてくれる人はコストのかかる罰をよく行使する傾向がある。
人に親切にするという規範を守っている人ほど、最後通帳ゲームで低額オファーをよく断るのだ。

悪意の科学より

他人のためにドアを開けてくれる人って、なんとなく想像できる‥クソ真面目な性格の人が多いかも?

確実な方法を探し続ける人や失敗に怒りを覚える人も、こういう傾向がありそうですね

前述しているGIVE&TAKEに書かれていたギバー(自分が損をしても相手に得をさせたい人)は公平じゃない人へ罰を与えることは少なく、マッチャー(損得を考える人)の方が悪意が働きやすいってことですね。

平等思考から来る悪意のある人々は社会のためになる行動をとるように、人々をうながすと言われています。
「これ、結構迷惑な話では?」‥と感じます(^^;)
平等思考から来る悪意のある人々が増えると、社会的には良くなるのかもしれませんが、同時に息苦しさも感じますし。

周りの目が気になって、やってみたい行動できなくなる人が多くなるということですよね‥。

平等に分けない(自分だけが得をしたい)人

他者より優位に立つことが最優先。
低額オファーを断った人の中には「支配的悪意」を持った人もいるそうです。
・平等に分けて欲しいから→×
・自分と相手の得る(失う)額を比較している→

前述している「最下位になりたくない心理」とも関連しているのだと思いますが‥
たとえば、麻雀ゲームに例えるとわかりやすいと思いました。
ざっくりした説明になりますが、
・麻雀は基本4人でプレイ
プレイヤー同士で点数を奪い合う
最終的に点数が多い人の勝ち
・・というルールです。

ルールは場所によっても変わるのですが、ルールの一部に‥
・親1人、子3人でプレイ→親は全員に同じ回数まわってくる(誰かの点数が途中でマイナスにならない限り)
・ツモ上がり→ツモった人以外は点数が引かれツモった人に入る、ただし子にツモられた場合、親は他の子の2倍の支払い(8000点だと、親4000点支払い、子2000点支払い)
・親がツモ上がりした場合、子が1.5倍の支払い(通常だと12000点が18000点になる、なので子が1人6000点支払い)
・・こういうルールがあります。

たとえば、こんな状況のときは書籍でいう「支配的悪意(競争で優位に立ちたいがための悪意)」を感じやすいんじゃないでしょうか?
1位:A(点数31000)・親
2位:自分(点数30000)・子
3位:B(点数22000)・子
4位:C(点数16000)・子

Cが8000点をツモ上がりする
1位:A(点数31000)・親ー4000点
2位:自分(点数30000)・子-2000点
3位:B(点数22000)・子-2000点
4位:C(点数16000)・子+8000点

順位変動
1位:自分(点数28000)
2位:A(点数27000)
3位:C(点数24000)
4位:B(点数21000)

おそらく、自分がプレイヤーだったら逆転1位になって「Aを蹴落としてくれてありがとう(^^)」と感じるでしょう。
ただし、競争に優位にならない場合は支配的悪意が働かないと書籍に書かれています。
たとえば、
・全員の持ち点が25000点
・自分とAだけ比較する
・他のプレイヤーは無視すると仮定
・親のBが1500点ツモ上がりする(B以外全員-500点)
・自分とAだけで比べた場合、持ち点が同じ24500点で点数差はないので支配的悪意は働かない

「平等にしたい」ではなく「他者より優位に立ちたい」「他者を支配したい」というのが反支配的悪意と違うところ。
書籍でも、罰を行使しても金銭的に相手より有利になれない場合、彼らは罰を与えることに関心を示さなかったと書かれています。

・1ドル払えば、相手から3ドル没収できる→他者より多くの金額を持ちたい人はやる
・1ドル払えば、相手から1ドル没収できる→相対的に金額が変わらないのでやらない

自分だけが得をすることに罪悪感を抱く?

私たちは自分が手にする金額だけでなく、他のみんながいくらもらうかも気になる
(中略)
しかし、他者よりも分け前が「多い」ことを嫌うこともある。

悪意の科学より

これは散々読んできたから分かる、「反支配的悪意」を向けられるのが怖いからだね

動画やブログで成功して、「アンチが付いたらどうしよう‥」という心配も同じかもしれませんね

そのため、私たちに罪悪感を抱かせ、不平等な行動を思いとどまらせる。
私たちは全員が平等な分け前を得られるかどうかを考慮するとされています。

大人は子供より「意図」を重視する?

余談ですが、大人の場合、不公平なオファーをされた場合は、その「意図」も考慮すると書籍には書かれています。

人間は年を取ると、不平等は公平でありうることに気付く、そして、意図をより重視するようになる。

悪意の科学より

最後通牒ゲームで10ドル中2ドルのオファーを出す。
ほかに選択肢がなかったなどの事情があった場合、子供はオファーを断る割合が変わらないが、大人の場合はオファーを受け入れる確率が高まるそうです。

前述している「累進課税・富の再分配」は不平等ですが、公平ではあります。
※累進課税は、所得が多い人の税金を高くし、所得が低い人の税金が安くなる仕組み
たとえば、
富裕層の年収:1億
貧困層の年収:200万円
課税額が両者とも50万円だと、時が経つにつれて富の格差が広がる。
なので、貧困層の課税額が50万円、富裕層の課税額が5500万円などの差を付ける=不平等だけど公平となります。

「不平等≒公平」は幼い子供では理解が難しいかもね

ランダム性の高い機械に対して悪意を抱く人は少ない

通常は約70%の人が低額オファーを拒否するが、コンピューターがランダムに低額オファーを出した場合、全く逆の反応が見られ、約80%の人がオファーを受け入れる。
意図がなければルール違反ではなく、悪意も生じないのだ。

悪意の科学より

この機械からの低額オファーを拒否る人たち(残り約20%)は、上手くいかないとゲーム機をブッ叩いて壊す人たちかな?

正義のための悪意・ナメられないための悪意?

「みんな誰か他の人に罰を行使してもらう方が得だということ」

自分に嫌なことをした他人に仕返しをすると、報復される可能性がある。なので、第三者に罰を与えてもらう方が得だと感じる。
たとえば、スーパーのレジに並んでいるときに怖そうな人に割り込みされたら、「注意しない人」が多い。
理由は、相手に何かされるのが怖い(または面倒くさい)からという人が多いと予想されます。
そんなときに勇気ある第三者が割り込みした人に注意したら、怖そうな人から(あなたに)害を与えられることなく、割り込みした人を最後尾に移動させれるかもしれない=自分はコストを負担しなくて済む。
そして、注意してくれた第三者に感謝する

誰もが罰を与える者の行動によって わずかな利益を得るが、罰を行使する者だけがコストを支払うことになる。

悪意の科学より

書籍にも「最もたくさんのお金を手にしたのはコストのかかる罰を使うことが1番少ない人々だった」‥と書かれています。

・・と考えると警察や裁判という仕組みは、自身への報復を減らすための第三者による罰としての役割ということだね

ただ、後述する偽善者を嫌う心理もあるので、「正義=リターンあり?」とは一概には言えませんがね

ナメられないための悪意について。

書籍には、カラフルな色の虫の話が紹介されていました。

悪意はこの模様のような役割をする。毒をもっていると警告を発するのだ。
(中略)
その結果、あなたが悪意のある行動をとった相手は、みんなではなく あなただけに対してより協力的になる。

悪意の科学より

「こいつはヤラれたらヤリ返す危険なヤツだ」‥というイメージは社会生活でも役立つ場面が多いよね

この辺は初回が大事ですね。いじめ・パワハラなどを回避するのにも役立ちますね

今コストをかけて相手に立ち向かわなければ、後々また酷い扱いを受けることになる‥と著者も言っていますが、その通りです。

生々しい話で恐縮ですが‥攻撃してきた相手への痛めつけ(報復)が足りないと、後々さらに厄介になって返って来るという。
(書籍内でも、主人公が敵と命をかけて戦う→主人公が勝ち、敵を許す(逃す)→最後に主人公がその敵に殺される‥という映画の話が紹介されていました)
ただ、失うものがなくなるほど痛めつけてしまうと、これまた厄介になるのでバランスが大事だなと個人的には思っています。

極論、上記の映画の例だと自分に殺意を抱くほど悪意を持った人間が「生きている限り」、不安は尽きないと思います。

親切な者が嫌われる→偽善者を嫌う心理

書籍に「偽善者ぶる者への蔑視(べっし)」という内容が書かれています。

人々は他者が自分たちよりも得をしたために生じた損失に反応する。
コストのかかる罰は単に損失に対する報復を意味しているわけではない。
他者が自分を出し抜いたことで、反支配的反応を引き起こしたのだ。

悪意の科学より

あるゲームの実験が紹介されていました。

・あなたと3人のプレイヤーは20ドルずつ渡される
・各々、いくら自分の取り分にして、いくらグループの基金にするかを決める
・この基金から全員に配当が支払われる
・基金に投資される金額が多ければ多いほど配当も大きくなる
たとえ自分が基金に投資をしていなくても全員に配当が支払われる
・つまり、1番手持ち金を大きくするには、自分は1ドルも出さずに他の者が基金に投資する
・しかし、最後に全員が(プレイの仕方が気に入らない等の理由で)他のプレイヤーに罰を与えることができる
・罰の内容は1ドル支払えば、選んだ相手は3ドル失う

結果はどうなったか?

1ドルも基金に投資せずに自分の利益を最大化しようとする者(利己的な者)への罰は想像できると思いますが、基金に1番多く投資した者(利他的な者)を罰するプレイヤーもいたようです。
気前のいい人のおかげで利益を得たにもかかわらず。

では、次回また同じゲームをしたらどうなったか?
気前のいい人は前回ほど貢献しなくなり、協力も減る=全員が損をするということになったそうです。

貢献が少ない人々は、より多く貢献している人々が有利な地位を得たと感じるだろう。
寛大な行動をした協力的な人々は地位や評判を手にする。
そして、こうした気前のいい人々は支配的になるかもしれないと恐れられてしまう。
(中略)
最善は善の敵

悪意の科学より

ほかの観点からも、分かりやすい説明が書かれていました。

・人間は協力相手に選ばれるために競争している
・選ばれるための方法は2つ
・1つめは、他の人より親切で気前がいいこと
・もう1つは、競争相手を見劣りさせること
・競争相手を妨害すれば、自分を比較的善良に見せられるかもしれない
・自分をより魅力的なパートナーに見せるために気前のいい人を罰する
人々がより寛大になることを妨げるため、社会にとっては問題である
・人々が善良すぎないほどに善良になることを促している

自分勝手もダメで、利他的すぎてもダメ‥人間って本当に繊細‥

前述しているGIVE&TAKEの書籍では、ギバー(利他的な人)はギバーであることを隠すことも多いそうです、悪意回避のためなんですね‥

自分がより豊かになりたいと願うなら、全員の力を底上げする必要があるということ。

余談ですが、格差が大きい国ほど気前のいい人をよく罰する傾向があるそうです。

格差が特に大きい国では、他者より優位に立つと相当な利益が得られるからと思われる。
(中略)
反支配的な面がそうした人々を引きずり降ろそうとするのだ。

悪意の科学より

以前読んだ「欠乏の行動経済学」や「ケーキの切れない非行少年たちのカルテ(小説版)」のレビューでも書きましたが、格差を見せつけれられる状況が1番キツイ‥(^^;)

格差を見せつけられる不快感を取り除くには、
・自分が上に行く
・他者を引きずり下ろすしかない
・・と考えるのは自然なのかもしれませんね。

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「運」と「努力・才能」、どちらへ悪意が向きやすいか?

書籍では、努力と才能が試される「破壊の喜びゲーム」と よばれる実験をしていました。

・被験者たちは雑誌広告の質を評価するよう依頼される
・評価には、かなりの時間がかかる
・希望すれば3件まで評価できる
・評価した件数に応じて報酬が支払われる
・ほかの人も同じ作業をしている
希望すれば相手の手にした報酬を無効にすることができる
相手の報酬を減らしても自分の報酬が減ることはない
誰のせいでお金が減ったのか知られない(匿名)

あなたなら、誰かが一生懸命作業をして得たお金(正当に得たお金)を減らしますか?

答えは、約40%の人が減らす選択をしたというもの。
ちなみに、誰にお金を減らされたか知られる場合(匿名ではない場合)は、ほとんど相手のお金を減らさなかったそうです。

だから匿名でコメントを書き込めるSNSやYoutubeは怖いのか‥

なぜ、正当に得たお金でも減らそうとするのでしょうね?

運ではなく実力によって優位に立つと、ほかの人々はさらに脅威を覚え、あなたに悪意を抱きやすくなる。
(中略)
誰かが運のおかげで、あなたよりも多くの報酬を手にした場合は、その人があなたよりも優れていることにはならない。
一方、相手が実力により優位に立った場合は2人の間に揺るぎない差があることを意味する。
人々は相手が実力によって自分よりも多くを得た場合、運だけで得をした場合に比べ、相手のお金をより多く減らそうとする。
才能は運よりも大きな脅威なのだ。そして、匿名の状況下では才能のせいで悪意の犠牲になることもある。

悪意の科学より

怖いですね‥(^^;)
私も最近では何かを得た場合、しきりに「運が良かった」と言っていますが意味がわかった気がします。

現在「親ガチャ」という言葉が流行っていますが、努力・才能で結果を出したと豪語(ごうご)する人は叩かれて炎上していますよね→優しさ?
逆に、「自分がここまで来れたのは環境や運のおかげ」と言っている人は叩かれにくい。
※親ガチャとは、どんな親の元で生まれるかで その後の子の人生の難易度が変わるという意味。カプセルトイやソシャゲのガチャから由来

何度も書いていますが、全員の力を底上げしないと、豊になるのは難しい。

せまい世界での悪意は脅威である

競争相手が世界全体なら、問題になるのは自分の懐にいくらあるかということだけだ。
ところが、たとえば限られた場所で2人の相手と競争している場合、懐にある金額そのものよりも、それが相手よりも多いか少ないかの方が問題になる

悪意の科学より

前の方でも書いていますが、格差が見える(見せつけられる)のが1番キツイってやつですね(^^;)
さらに人間には「地位的バイアス」という偏向があるそうです。
①金額自体は大きいが、他の人より少ないお金を受け取る
②金額自体は小さいが、他の人よりも多いお金を受け取る
・・のと、どちらか一方を選べる場合、②を選ぶ傾向がある。

つまり、まわりが10万受け取って、自分が5万受け取るより、自分が1万受け取って、まわりが5000円受け取る方を選ぶということだね

絶対的な利益よりも、他者に対する相対的な優位を取る。
限られた場所での競争の方が悪意を抱きやすいことが確認されているそうです。

お金の話に限って言うなら、
世界にはインフレーションというモノの価値が上がって、お金の価値が目減りする現象があるので、②が理にかなっているような気もしますが、実際どうなんでしょうね(。´・ω・)?
※2023年現在の物価高がまさにインフレーション
たとえば、
①だと「(自分以外)みんな豊かになったから消費税を上げるね」‥という政策と採られかねません。つまり、自分だけが苦しくなる。
②の場合だと、(自分以外)みんな苦しいから「消費税引き下げ&現金給付するね」‥という政策があるかもしれません。つまり、自分だけがラクになる。

ただし、出世やスキルの向上だと、また別の話になります。

いままで見て来た「最下位になりたくない」「他者より優位になりたい」「自分だけが得をすると罪悪感を抱く」など色んな感情があって人間って複雑ですね

これらが、そのまま人々の生きづらさになっている気がしてならない‥(^^;)

悪意のある者は失敗を恐れる?

制限時間内に足し算をし、何問正解できるかというゲームが紹介されていました。
このゲームを被験者たちにしてもらうと、悪意のある人々のほうが悪意のない人々より2倍近く成績が良かったそうです。
特に面白かったのは競争するか?しないか?を選べるときには悪意のある人々は「競争しない」という選択を取ることが多いと書かれています。

他者より不利になることを嫌い、(誰かが自分よりも多くの損害を被るなら自分もお金を失っても構わないほどに)有利になることを好む人

悪意の科学より

べつの言い方をすれば、悪意のある人々は失敗を恐れるとも言えるのかも‥

せっかく悪意のない人々より能力が高いに、もったいないですね

利己・利他・公平・悪意では、どのタイプが生き残るか?

最後通牒ゲームの「特定の戦略」を使うコンピューターシミュレーション実験が紹介されていました。仮想プレイヤーが4つのうち1つの戦略を取るように設計されている。
どのグループが1番儲かるか?

①ホモ・エコノミクスグループ
どんなオファーでも受け入れ、自分たちが提案者になったときは不公平なオファーをする(自分の取り分を50%より多くする)
②支配的悪意グループ
不公平なオファーを拒否し、他者に不公平なオファーを提案する
③タダ乗りグループ
どんなオファーも受け入れ、提案者になったときは公平なオファーをする(50対50)
コストのかかる罰の行使は与えず、他者に任せている。
④反支配的悪意グループ
不公平なオファーを拒否し、自分は公平なオファーをする。

上記を人間として見るなら、(合理的ではあるけど)①を嫌う人が多そうだよね

報復されない世界なら①が強そうなイメージですが‥

結果は‥①のホモ・エコノミクスグループが1番儲かり、安定しているという結果になりました。
しかし、ゲームに「負の同類性」という要素を加えると状況が変わったそうです。
負の同類性のルールは、自分と同じ戦略を採用していないプレイヤーと対戦する確率が高くなるというもの。
結果はどうなったか?

「支配的悪意グループ」と「タダ乗りグループ」からなる安定した集団を作れるという結果に。

負の同類性を取り入れてない場合、悪意のある人々は絶滅し、残った人々は29%の回で公平なオファーをする。
一方、負の同類性を取り入れた場合、支配的悪意を持つ人々が存在できるようになり、公平なオファーの数も増えた。
そして、負の同類性の度合いによっては、最高で60%が公平になるのだ。

悪意の科学より

負の同類性なんて条件が現実にあるのだろうか?
非現実的すぎない?

研究者もあくまで「モデル」に過ぎないと言っていますね

もうちょっと分かりやすく書かれている部分の引用↓

あなたが公平に行動すれば、誰かがあなたに対して悪意のある行動をしても、相対的に得にはならないからだ。
あなたが誰かに10ドル中5ドルをオファーし、相手が悪意からそれを拒否した場合、彼らが相対的にあなたより得することはない。
双方とも5ドル失うだけだ。したがって、公平さは悪意に対する効果的な防御手段と言える。

悪意の科学より

さらに、摩訶不思議なゲームの結果も紹介されていました(前述している偽善者への罰で紹介したゲーム内容に似ています)。
中身↓

・プレイヤー全員が最初にグループの投資基金に貢献するか否かを決める
・貢献したか否かにかかわらず、配当を受け取ることができる
・プレイヤーたちはお金を払えば、投資しなかったプレイヤーに罰を与えることができる
・グループ基金に投資したプレイヤー=協力者
・グループ基金に投資しなかったプレイヤー=離反者
・お金を払って離反者のお金を取り上げた協力者=処罰者

結果はどうなるか?

・協力者が離反者を1人も処分しない→協力者は、かろうじて生き延びられる
・協力者(処罰者)が離反者を全員処分→協力者は死に絶えた、理由は処分のコストが高すぎたから
協力者が2回に1回だけ罰を与える→離反者は全員排除された

1度も罰を与えなければ負ける可能性が高く、毎回罰を与えていても確実に負ける。
ところが この2つの負ける戦略を交互に行うと、勝利につながるのだ。
(中略)
負ける戦略を2つ組み合わせる、勝つ戦略になることもあるという

悪意の科学より

マイナス同士の掛け算をすると、プラスの数字になる法則のようで不思議ですね(^^;)

見返りが大きい時だけ罰を与える人が優位に立つという意味で個人的には解釈しています。
不公平が発生→リスクとリターンを考えず機械的に罰を与えていたらコストが増大するのは容易に想像できます。
たとえば、会社でエース級の人が転職をチラつかせて賃上げ交渉をすると交渉が成立し、エース級の人は得をする確率が高い。
一方、あまり会社に貢献できていない人が賃上げ交渉しても交渉が通らず、むしろ不利な立場になる確率が高い。

女性や子供など弱者に強気に出る人はいても、ヤクザのような強者に強気に出る人は少ないのと同じ理屈かな?

余談:不公平なやり方で優位に立ったものへの悪意

・他者がルールを破ることで自分が損をするとき、人々は罰を与える
・相手が道徳的規範に違反したというだけで罰を与えるわけではない
・罰は協力を促すためではなく、不公平なやり方で自分たちよりも優位に立った人に害を与える
‥と書籍に書かれていました。

少し前にイラストのトレパクで大炎上した有名絵師(K絵師)がいましたが、まったく同じ原理なのかもしれません。
トレパク発覚→絵の取り下げや画集の回収で被害を被ったクライアントが怒るならまだしも、無関係な絵師や見る専の人々(?)からの攻撃が酷かった‥(^^;)

ズルをした人を無関係な人々が罰するのは2つの理由から‥
①第三者を罰するのは気持ちがいいから
②上に立つ者を失墜させて自分が優位に立ちたいから

特に、上記の場合、他の人に自分の動機を知られないようにしたいと思うことが多いと思います。

悪意があることを見抜かれないようにするという強い社会的プレッシャーから、人々は悪意というオオカミを覆い隠して、ヒツジのふりをする。

悪意の科学より

本当は他者より優位に立ちたいだけなのに、公平じゃないことに怒っているフリをするわけだね

他者に「本心」を悟られないように「建前」を信じさせるには、自分も その嘘を信じることと書かれていますしね

ただ、この「本心」と「建前」の悪意が人々の間に公平性を生み出したというのも事も書籍に書かれています。

話がそれますが、「自分は悪者だ」という自覚を持って行動している人はやっぱり尊敬に値するなぁと改めて思いました。
普通の人は自分が悪者になるのがツライ(自分を責めるのはツライ)→まわりの環境・人が悪い!公平じゃないことが悪い!・・と無自覚で他責思考になりますからね。

表に出すかは別として、本心を見失わないようにしたいものです。

自由が失われると、自由を取り戻そうと悪意を抱く

「人間は正しくあるよりも自由でありたいと願うもの」

書籍では、被験者グループに2種類の文章を読ませる実験が紹介されていました。
①自由意思を支持する文書
②自由意志を批判する文章
すると、②の自由意志を批判する文章を読んだ被験者グループは、他者を助けようとする傾向が弱まり、攻撃的な行動が増えたそうです。

さらにもう1つの実験では、被験者に上記の①②の文章を読ませてカンニング可能な数学のテストを受けてもらったところ、自由意志を批判する文書を読んだグループの方がカンニングする確率が高かったそうです。

自由意志を信じられなくなると社会的に望ましくない行動を助長しかねない
(中略)
人間が責任を負っているのは自分の自由な意志に基づく行動についてのみであり、自由意志がなければ責任はなく、とがめられる心配もないというわけだ。
(中略)
自分で人生をコントロールするのが難しいと感じる人々が増えてきている状況を鑑みると、これは憂慮すべき事態だ。

悪意の科学より

身に覚えがありすぎる(^^;)
裁量権(自分でコントロールする力)がない会社で働いていたときは、できるだけ働かない運動したり、ものすごく荒れていたので‥。

普通のフルタイム会社員だと(平日の場合)1日の約1/3は会社に支配されるわけなので、「俺、責任ねーし、シラネ(゚∀゚)」となりそうだよね

仕事が超好きで働いている人、働いても働かなくてもいい選択肢がある人は別ですけどね

自分の感覚が脅かされていると感じた時に引き起こされる反応を著者は「ブレイブハート効果」と呼んでいるそうです。
これは失われた、または脅かされた自由を取り戻すために湧き起こるモチベーションのこと。

実際に自由が脅かされたらどうなるか?

自分たちの自由を脅かす個人や集団に対する否定的な考えが頭に入り込み、強制されている物事を憎み禁止されていることをしたくなる。
失われた自由の感覚を取り戻すために行動を起こす
私達は禁止されている事をあえて行い、自由の感覚を取り戻そうとすることもある。

悪意の科学より

これは商売の世界でもよく使われている「カリギュラ効果」に似ていますね。
やめた方がいいと言われると、逆に興味を惹かれるという。
カリギュラ効果が悪意の話につながっているのは斬新でした。

あとはC国のように情報統制して情報を隠すと、逆に興味を持つ人が増える‥というのも似ているかもしれないね

逆に、あえて自由を奪い、人をコントロールすることもできますね

戦争・テロ・ケンカはなぜ起こるのか?

神聖な価値に全てを捧げている人々は、その行動の価値と利益を天秤にかけるのではなく、自分が正しいと思ったことをただ行うだけなのだ。

悪意の科学より

どこかで見た内容ですが、本気で戦争やケンカをする人は「みんな自分が正しいと思っている」と言われていました。
さらに、自分が正しいから戦うと考えている人に金銭などで和解交渉に挑んでも、ますます反発を招くだけと書籍で言われています。

ダメ元でやる裁判などの例はありますが、「自分が間違っているけど戦う」という覚悟のある人は確かに少ないですね

前に読んだ話で内容うろ覚えですが‥
・ある夫婦の話
・夫が子供の頃から大切にしている亡き祖母からもらったマフラー
・そのマフラーを妻が(夫の)浮気を疑って燃やす
・夫は浮気していないと、のちに解かる
・妻はマフラーを弁償しようとするも夫は許さない→離婚
・・という話がありました。

祖母からもらった世界に1つだけのマフラーを失った悲しみ‥というのもあると思いますが、「自分が大切にしているモノを雑に扱われた怒り」も大きいと思います。
たとえば、コレクターさんなら、家族にコレクションを勝手に捨てられたら怒り狂って2度と許さないんじゃないでしょうか。私も多分そうなので‥。

なので、自分が正しいと思って戦いに挑んでいる人と和解交渉する方法は相手の大切にしていること(もの)を尊重すること。
たとえ、相手の主張が間違っていても頭ごなしに否定するのではなく、いったん耳を傾けることだと言われています。受け入れるかは別として。

「相手の(間違っている)主張をいったん受け止める」‥並大抵の人間には出来ないけどね

それって本当に不平等・不公平に対する怒り?

先ほどから少し触れている内容です。

人間が本当に怒るのは自分が害を受けたときだけだというのだ。
(中略)
不公平なことに対して憤っていると話すのは、そうすれば自分たちが受けた害に憤っているわけではないと伝えられるからだという。
それに自分には より純粋で私心のない動機があることを示せる。

悪意の科学より

周りの目が怖いから本心を隠すというのは大人でもいますし、結構グサッと来た人も多いのではないでしょうか(^^;)

人間は少しでもチャンスがあれば、見せかけだけの道徳観を示して、自分は道徳的行動から逃れようとする。
(中略)
犠牲者が公平性の侵害に対する道徳的憤りを口にするのは、ほかの人々から支援を得られる可能性を高める手段なのかもしれない。
道徳を説く場合には、誰もがよく注意して、自分にも他者にも正直になる必要がある。

悪意の科学より

自分が害を受けたことを道徳的な問題にしてしまえば、人々がその問題に対して「非難するように仕向ける」こともできると言われています。

・反支配的悪意は引きずり下ろすべき人物を引きずり下ろすのに役立つ
・しかし、勤勉で革新的で気前のいい人まで引きずり下ろしてしまう恐れがある

本質を見抜く目って本当に重要なんだなぁと思いました。
歴史上でも、借金背負ってまで国民のためになる政策を打ち立てた人物Oが悪意のある人物から(?)嘘の情報を流され、その情報を信じた国民にOは引きずり下ろされてしまうという事が起きていました(^^;)

国民は自分の首を自分で絞めている。

あやまって味方を殺さないように、しっかり見極めたいと思います

余談:パイを増やして、皆で豊かになった方がいいに決まっている

ある古い話が紹介されていました。

・アメリカ人農夫とロシア人農夫
・いずれも隣人の牛が品評会で入選する
アメリカ人農夫は隣人よりも立派な牛を育てることを夢見る
ロシア人農夫は隣人の牛が死ぬのを夢見る
・どちらも隣人より優位に立ちたいと思っている
・ロシア人は富の総量(パイ)を減らしてしまう
・アメリカ人は富の総量(パイ)を増やそうとする

結果、どちらの国がより豊かになったか?‥現在の両国をみれば一目瞭然ですよね。

では、今の日本のように親の年収を超えられない場合はどうしたらいいのか?に対する答えは経済成長に対する恩恵を「公平に」分配すること‥と著者は言っています。

個人的に思ったのは、累進課税や子育て支援など色んな政策がありますが、若者にお金が回っていない感もありますね。

まとめ:「悪意」は武器にも防具にもなり得る

・人間は損をしてでも悪意を向けるときがある
・他者を支配したい悪意と、他者と平等でいたい悪意がある
・運より能力が高い人は悪意にさらされやすい
・上に立つ者は善人であっても引きずり下ろされることがある
・自由じゃなくなると悪意を抱きやすい
・他者を尊重することの大切さ
・本質を見失わないこと←超重要!

世界中で大衆迎合主義(平等主義)が高まっている現在、我々が目にしているのは全世界を舞台に展開する大規模な最後通帳ゲームだと著者は言っています。

平等主義・抑圧を嫌う人々がいて自分が損をしてでも他者に害を与えてくる‥こういう存在がいることを理解すると、気前のいい方々のアンチ対策にも役立つんじゃないかと思います。
気前のいい権力者は、みんなのパイ(富)を大きくする存在なので生き残ってほしいですからね‥(^^;)

あと、悪意を使う立場なら、タイミングと向ける相手を見誤らないことが大事ですね。


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